失語症者のコミュニケーション・バリアをとりのぞき、社会参加を促すために~意思疎通支援者養成事業

 次年度から実施される『失語症者向け意思疎通支援者養成事業』についての勉強会が、平成29年11月26日新宿区立障害者福祉センターで、平成30年1月8日ツクイ・サンシャイン杉並で、計2回開催されました。普段失語症友の会などのグループに関わっている人、そうでない人も、事業に関心を持ってくれたのべ65名が集まり、真剣に話を聞いてくれました。最初5名で始めた委員会も、思いが共有できたおかげで12名に増えています。
 勉強会はどちらも、3人の講師による講義に続き質疑応答という4部構成でした。
 先ず、会長の西脇恵子STより、この新しい制度の成り立ち、概要、これからの展望も含めて話がありました。10月に実施された厚労省主催の事業指導者養成研修でのこぼれ話も聞くことができ、東京が全国を引っ張っていく意気込みで取り組まないといけない、という気持ちを新たにしました。福祉制度における「地域生活支援事業」の中の「意思疎通支援制度」に、制度の狭間に置かれがちだった失語症者向けの事業を新しく位置付ける、と決められたことは大変画期的なことです。
 次は黒川容輔STより、この制度は実技演習と友の会やサロンなどでの実習が多いのが特徴で、養成の中でどのような場面が設定され、どのように評価していくのかの説明がありました。支援者にどんな能力が必要なのかがイメージされ、指導する立場のSTはどうすればいいか、を考えつつ聞いた参加者が多かったように思います。
 最後は小林久子STから、失語症のグループについて、その目的、場、集う人が多様であることと、支援者を交えた場合の運営のポイントについて、実際のグループの動画も交えながら説明がありました。いつもの関わりを見直すいい機会になりました。
 この後質疑応答が行われ、その内容は都士会HPに掲載してあります。参考にしてください。

 この勉強会は、新しい養成事業の中身を伝えるために実施したのですが、そもそも私たちSTの臨床活動は、失語症のある方のわかりたい、伝えたいという気持ちにこたえることから始まることを再認識することができました。
 日々の訓練の先には、失語症のある方が自身で考えて過ごす、人と会って話す、外出して余暇活動を楽しむ、会議などで意見を聞き、また発表する、そんな当たり前の社会参加の場がつながっていることが重要だと思いました。そのためには、回復期、生活期に関係なく、STがいつでもどこでも失語症のある方の生活を見通せる力が必要だと感じました。

 2回の勉強会に参加した失語症・高次脳機能障害部員からは以下のような感想をもらいました。
*今回の事業は、派遣プログラムであることから、失語症の方の生活に密に関わることや、一般の人が多く関わることが今までと大きく異なる点だと感じました。そのため、まだまだ知名度の低い失語症を多くの人に知って、理解してもらうことや、失語症の方が溶け込みやすい生活環境を作ることにつながるのではないか、と期待しています。そして、都士会の委員の方々の熱意ある話から、自分も力になりたい、と感じています。
 今後、具体的な派遣場面例などが知りたいです。
*STや当事者の方々の必要とする声が大きな後押しになり、国が動いて公的な事業として始まろうとしている、凄いことだと思います。
 私は回復期病棟にいますが、患者さんの退院後の生活を考えた時に、失語症の方に沿った支援方法を理解し、本人や家族を支援する方がもっと増えればと思うことが多々あります。どうしても日々の臨床で頭が一杯になってしまいがちですが、STだからこそこの事業に関心を持ち、世の中の多くの方に知っていただけるように何かお手伝いできればと思いました。
*この事業は友の会やサロンで実習を受けた意思疎通支援者が、そこに通われている失語症の方に対してサービスを提供することが基本、と理解したので、そんな友の会やサロンがない地域では、デイや高次脳の集い、福祉センターなども認めてもらえるのか、が明確にされると良いと思いました。友の会がないから参加できない、という誤解を招かないよう、どの地域でもいずれやっていかねばならない、という点を強調してもらえるとわかりやすかったと思います。

 これからは主にHP中心の情報発信になりますので、いつも気にかけておいてください。これから始まる、そして長く続くこの事業について、ともに委員として企画・運営に携わりたい、協力したい、またグループや演習、実習に興味がある、などなどお問い合わせは、次の専用アドレスからご連絡ください。

アドレス:ishisotsu@st-toshikai.org

 そして最後になりましたが、次の勉強会のお知らせです。
 次回は、実際に実習サロンとして登録していただく手順や具体的なスケジュール、実習でどういう指導をするのかについて、実践も交えて説明したいと思います。

 3月25日(日)午後1時より、新宿区立障害者福祉センター2階で開催することにしました。今回ももちろん無料です。関心のある方は、どうぞご参加ください。

東京都都士会担当理事 宮田睦美

2017/11/26 新宿

2018/1/8 杉並

0